ITSS、ITILへの理解を深めて頂くため、専門家アドバイザーの山崎有生氏(セイ・コンサルティング・グループ株式会社:中小企業診断士)に解説をして頂きました。
ここは北海道ITSS・ITLL研究会の事務局がおかれている(株)北海道ソフトウェア 技術開発機構のオフィスです。道内のIT企業X社(従業員数:約100名)の前田社長がITSSについて専門家アドバイザーの山崎有生氏(セイ・コンサルティング・グループ(株):中小企業診断士)に相談しています。ITSSを最近耳にする前田社長。さて、どうなることでしょう。
最近、私の周りではITSSという言葉を良く耳にします。お恥ずかしい話ですが、ITSSとは何ですか?
道内では、ITSSの認知度は35%ぐらい(2005年7月現在)だそうですから、そんなに卑下されることはないですよ。ITSSとは、ITスキル標準(IT Skill Standard)の略です。ITスキル標準とは、経済産業省が2002年に公表したIT関連サービスの提供に必要な実務能力を体系化した指標です。この図(※1)のように横方向に11職種・38種類の専門分野を定義し、縦方向に個人の能力や実績を7段階のレベルで設定しています。ITスキル標準とは簡単に言えば、ITスキルの指標=“ものさし”だといえます。
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壮大な構想ですね。では、ITSSが策定されたことの意義は何でしょう?
3つあると思います。まず、1点目は、スキルの可視化ということです。目に見えないものは管理できません。ITスキルは目に見えないだけに管理ができませんでした。これを見えるようにすることによってITプロフェッショナル個人、ITベンダー、ユーザーが共通の定義でスキルを管理してゆこうという発想です。
「目に見えないものは管理できない…」。確かにそうですが、当社は社員の自主性を重んじています。管理主義は好きではないんですが…。
もちろん、管理といってもいわゆる社員を縛るということではありません。今まで曖昧であった個々人のスキルが可視化されることでITベンダー経営戦略を立てやすくなったり、従業員の方々はキャリアプランを立てやすくなったり、ユーザー企業は人材調達がスムーズになったりといった効果があるのです。(この点についてはまた次回以降詳しくご説明いたします。)
2点目は、スキルの“ものさし”であって、知識の“ものさし”ではないということです。つまり、「スキル=できる」の尺度であって、「知識=知っている」の尺度ではないという点です。知識の“ものさし”としては情報処理技術者試験があります。ご存知の通り、この試験は、経済産業省が情報処理技術者としての「知識・技能」の水準がある程度以上であることを認定している国家試験です。しかしながら、「知識があること」=「実務能力があること」とは必ずしも言えませんでした。そのため、ITSSでは、「達成度指標」という概念を使い経験と実績を見ることを重要視しています。
当社では国家資格取得を奨励しています。今後、今までのような資格制度はなくなってしまうのでしょうか?
いえいえ、決してそのようなことはありません。現に経済産業省でも情報処理技術者試験とITスキル標準との対応について文書を発表していますよ。
なるほど、安心しました。
そして、3点目は、ヒューマンスキルを重視していることです。IT産業は大きく捉えればサービス産業ですから対人能力が重要なことは言うまでもありません。ITスキル標準でも、「コミュニケーション、ネゴシエーション及びリーダーシップについては、研修などの教育・訓練である程度十分な育成が行えることに加えて、近年、サービスビジネスとしてその重要性が叫ばれていることから、全ての職種にわたってスキル項目として盛り込んでます。」と明確に述べられています。
当社でもヒューマンスキルについては問題意識を持っていました。例えば、社内で一番人数の多い技術者が高い技術力と交渉力を兼ね揃えることにより、あと10%でも売り上げに貢献できれば、会社全体の売り上げが110%になりますから。人数の少ない営業が200%のがんばりを見せるよりインパクトが大きいのです。
それと、以前からプログラマーからSEになるところで大きく仕事の内容が変わってしまい、上手く適応できないエンジニアがいたことも指摘しておきたいですね。いわゆる要件定義や、仕様変更の部分です。そうならないように育成してゆきましょうという啓蒙でもあると思います。
いま、火を噴いて大変なことになっているプロジェクトの原因を調べてゆくと技術的なことは少なくて、ヒューマンスキルの問題だったりするわけです。現在のようにユーザーニーズが多様化して、技術も多様化すると一人でシステムの全てを把握することはできなくなります。すると、この業界の仕事は個人作業ではなくチームで行うことが増えるわけですが、顧客対応から仕様書の作成、プロジェクトメンバーの動機付けにいたるまでなかなかちゃんとこなせる人材は少ないですね。
ご苦労お察しいたします。
ところで、経済産業省ということは国が作ったということですね。何のために国がITスキルの“ものさし”を作る必要があったのでしょうか?
一つには、「e-Japan計画」を人材面から支えるという目的があったためです。「e-Japan計画」とは、ご存知のことと思いますが、日本政府が進めている世界最先端のIT国家を実現するための国家戦略です。当計画の重点課題として、「高度ITプロフェッショナル人材の育成」があり、それを実現するための「スキル指標」として作られたのです。もう一つは、インドや中国をはじめとしたアジア諸国が、高度なIT技術と安価な労働力を武器に台頭してきており、こうした面からも国内のIT技術者の質的向上を図る必要があったからです。一部の県では発注要件にITSSが使われ始めたそうですよ。
なるほど、当社もこの流れに乗って売り上げを伸ばさねば。
それでは、次回はITSSの活用方法について一緒に考えることにしましょう。