高度IT人材育成研究会(北海道ITSS研究会)

ITスキル標準(以下ITSSと略す)の導入方法への理解を深めて頂くため、専門家アドバイザーの山崎有生氏(セイ・コンサルティング・グループ株式会社:中小企業診断士)に解説をして頂きました。なお、ITSSとはどのようなもので、なぜ必要なのか?についてはバックナンバー(ITSS解説シリーズ第1回から第6回)をご覧ください。

第6回 「人材評価プランの作成」
〜評価を評価で終わらせない〜

スキル標準を使ってどう評価するか

本年度最後のテーマは、スキル標準を使ってどのように人を評価するかです。 その運用として前回(第5回)の育成と評価は車の両輪です。
評価 → 育成 → 評価 →のサイクルを仕組みとして定着させることが重要です。
人事評価と結び付けるかどうかはひとまず置くとしても、人を評価するのは大変だ。他社ではどのようにしているのでしょう?
評価の方法は大別して、 比較的取り組みやすい順に、
@客観テスト
A自己申告
Bレビュー
C業務経歴書
D面接
E研修
の6つの方法があります。現実にはこの組み合わせでおこなわれているようです。

客観テスト

それでは順に教えていただけますか?「客観テスト」は、その名の通りペーパーテストですね?
はい、そうです。客観テストの良いところは金額的にも時間的にも低コストで済むということです。また、結果は客観的に評価できますから評価者によるブレがありません。
しかし、テストで測られるのは知識であってスキルではないですね。実務能力としてのスキルの“モノサシ”であるスキル標準の本旨に反しますね。

自己申告

おっしゃる通りです。それ故、次の「自己申告」と併せて行われることが多いようです。「自己申告」は、スキル項目のチェックシートです。例えば、プロジェクトマネジャーのスコープマネジメントを例にとれば、
「WBSの作成」といった項目に対して、
「全く分からない」
「内容を多少知っている」
「他者の指導の下で業務に適用できる」
「一人で業務に適用できる」
「他者に指導できる」
のような5段階でチェックを加えることです。
なるほど。某自動車メーカーでも工員のスキルを
「人に教えてもらえばできる」
「 一人でできる」
「 安定的にできる」
「 人を教えられる」
の4段階で判断するということを聞いたことがある。
さすがよく勉強されていますね。人のスキルを表現するとなるとそのような表現に落ち着くようです。
「自己申告」のためのツールはいろいろな教育ベンダーから提供されているのでそれを使えばよいですね。しかし、手軽な反面、自己申告のみでは不正確な評価がされてしまう懸念がありますね。
そうです。客観性を高めるためには前述の「客観テスト」と組み合わせたり、上司と部下で一緒にスキルチェックツールに入力したり、後述の様々な方法と組み合わせる必要があります。

レビュー

そういう意味では「レビュー」と組み合わせると面白いと思います。プロジェクトの始めにスキル項目のチェックシートを渡しておいて、プロジェクト終結の際に自己評価、他者評価をするのです。あまり肩ひじ張らずに遊び心を交えて、ざっくばらんにやれると効果的です。
非常に仕事に密着した方法ですね。一種のOJT(On the Job Training:職務を通じた教育訓練)とも言えそうだ。現場サイドは忙しいのでスキル項目を絞り込めば実現可能でしょう。

業務経歴書

つぎに「業務経歴書」(※1)を使う方法です。この方法は実務経験を見るというITSSの本来の使い方に最も沿ったものです。プロジェクトの規模やプロジェクト内の役割、どのように課題を発見し、どのように課題を解決したかを詳細に知ることができます。
経験者を採用する時には書いてもらっているが、既存の社員にも同じように書いてもらえばいいわけだな。これはすぐにでも取り組みたいね。デメリットは無いのかな。
デメリットというほどではありませんが、やはり文章での表現力に長けた人が評価されやすいという面はあります。また、問題になりがちなのは過去何年まで遡るかということです。
20年前のプロジェクト経験を持ちだされても… というのはありますね。
多くの企業では3〜5年前まで有効でそれ以前の経験は評価しないようです。

面接

どちらかといえば大企業向けですが、「面接」を取り入れることでより厳格な評価をすることも可能です。「面接」であればヒューマンスキルをある程度評価することも可能になります。
コストはかかりますね。ただ、面接官がうまくフィードバックすれば教育効果も見込めるでしょうね。
留意点としては面接者の心理的誤差傾向を排除するための訓練が必要になることですね。心理的誤差傾向には、「ハロー効果(一つ良い点があると他もよく見えてしまう)」といったものが有名ですね。
私の現役時代に比べると社員は全員ひよっ子に見えるぞ。
それは「対比誤差」と言います。社長に比べれば…ということですね。
私には全員平均点に見えます。可もなく不可もなく…。
       
それは、「中心化傾向」です。みな平均付近に寄ってしまう心理的誤差傾向です。
心理的誤差傾向を排除するためにも、訓練された外部の人間を交えて面接することも一つでしょう。 また、評価者は被評価者より高レベルの人材をアサインする必要があります。 実際ハイレベル(レベル5〜7)になってくるとそれ以上の人材は社外に求めるのが一般的になるでしょう。

研修

次に「研修」を活用する方法もあります。特にヒューマンスキル系には有効です。 研修中に演習をしてもらってその演習行動やアウトプットを元にレベル評価するわけです。 参加者同士で相互評価してもよいですし、人数が少なければ講師が評価することも可能でしょう。
教育の話題は前回(第5回)で終わったのではないですか?
       
はい、しかし、評価にはフィードバックという側面があり、 この側面からは教育の機会と考えることができます。 人間は自分のことが分かっているようで分かっていないものです。 他者のコメントから「ありたい自分」と「現実の自分」の ギャップに気付くことが成長の第一歩です。 そういう意味では上記6つの方法すべてにおいて多かれ少なかれ教育の要素はあるものです。
自分で自分の背中は見えないもんだ。
社長は大分体が硬くなっていますからね。
       
…。

具体的には「ネゴシエーション(交渉プロセスの把握、実践、 効果的な交渉技法の活用、実践、信頼関係の確立、目標の設定、 共通利益、論理的思考の実施、問題解決手法の活用、実践)」といった スキル項目を示した上で、交渉のロールプレイを演習し、その結果を評価するといった具合です。

評価を評価で終わらせない

以上みてきた方法は、使用目的や予算に応じて組み合わせて使うことになります。 ハイレベルを対象に厳密な評価に力点をおくのであれば、 「業務経歴書」と「面接」を組み合わせるとか、 エントリーレベルを対象に育成に力点をおくのであれば 「客観テスト」と「自己申告」と「レビュー」を組み合わせるといった具合です。 いずれにせよ、評価を単なる評価だけで終わらせるのではなく、 育成に結び付けることが建設的です。
なるほどよく分りました。この6回の連載でスキル標準の構築と運用のイメージができました。
スキル標準とはどのようなもので、なぜ必要なのか?を 解説した 前シリーズ(ITSS解説シリーズ第1回から第6回)も参考になるぞ。
今まで1年間にわたりお付き合いくださいましてありがとうございます。 この取り組みが社員の方の自己実現と組織の活性化に役立てば大変うれしく思います

〜終わり〜

※1 経済産業省の報告書「ITスキル標準に沿った業務経歴書・面接によるスキル評価手法の調査研究」に 詳しい記事があります。
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/pdf/
gyoumukeireki2.pdf

=おまけ=

新井課長の日記 〜あるスキル標準導入企業の1年〜

バックナンバー

1 第一ステップは「要求分析」

2 第二ステップは「機能分析」

3 第三ステップは「スキル分析」

4 第四ステップは「人事戦略の策定」

5 第五ステップは「人材育成戦略の策定」

6 第六ステップは「人材評価プランの作成」

7 おまけ新井課長の日記 〜あるスキル標準導入企業の1年〜

H17年度バックナンバー 一覧

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